兵庫県美方郡香美町 年頭のごあいさつ


年頭のごあいさつ

 新年あけましておめでとうございます。町民の皆様におかれましては、輝かしい新春を健やかにお迎えのことと心からお喜び申し上げます。また、日ごろは町政に対して格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

 はじめに、昨年10月30日に発生したごみ処理施設「矢田川レインボー」の火災事故では、皆様に多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたこと、あらためてお詫び申し上げます。
 ごみ処理は皆様の生活、そして各種産業に密接に関連していることから、それらに支障をきたすことのないようにするのが行政の責務と痛感しています。幸い、可燃系処理設備は比較的被害が軽かったことから、11月20日には再稼働することができました。一方、不燃系処理設備は復旧のめどが立っていませんが、皆様への影響が最小限にとどまるよう、考えられる対策は迅速に行うことにしています。何とぞ、ご理解とご協力をお願いいたします。

 さて、近年は自然の脅威を痛感する出来事があまりにも多く、そうした報道に触れるたびに、自然の持つ想像を絶する力に畏敬の念を抱くとともに、防災・減災対策がいかにあるべきかという大きな課題に、あらためて身の引き締まる感があります。
 東日本大震災の記憶が鮮明に残る中、昨年は梅雨前線や台風による豪雨災害が全国各地を襲いました。特に、台風26号による伊豆大島(東京都大島町)で発生した土石流は、約40人の尊い人命を一瞬のうちに飲み込みました。お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、この災害が私たちに突きつけた教訓は、皆様一人ひとりと共有する必要があります。
 日ごろからの災害に対する備え、意識の向上、そして行政の危機管理の在り方は、何にもまして安全・安心なまちづくりに欠かすことはできません。幸いにして、昨年、本町では大きな災害は発生しませんでしたが、「防災」を「忘災」として捉え、災害を「忘れたころにやってくる」ではなく「必ずやってくるもの。そして過去の尊い教訓を決して忘れてはならない」として、さらに公助だけに頼らない、皆様一人ひとりが自己の責任で災害から身を守るという「自助」、そして地域で助け合う「共助」の心を、皆様と手を取り合い育んでいきたいと考えています。

 一方、昨年は喜ばしい報道もありました。6月には日本を象徴し、日本人の心のふるさとともいわれる国内最高峰の富士山(3776m)がユネスコの世界文化遺産に登録されました。また9月には、招致関係者の熱意が結実して2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決定しました。昭和39(1964)年から実に約半世紀ぶりの開催となります。
 町内に目を向けると、香住幼稚園の新園舎や香住小学校のグラウンドとプールの完成など、将来を担う子どもたちが健やかに成長できる環境が整いつつあります。そして県下初となる、小規模校の長所を生かした取り組み「学校間スーパー連携チャレンジプラン」は、着実にその成果を挙げています。保護者や教育関係者の皆様、町教育委員会が一体となって進めているこうした教育環境の充実が、明日の香美町を切り開く原動力となることを確信しています。

 早いもので、今年は香美町誕生から10年目、私自身にとっても任期2年目となります。時間は誰にでも平等に与えられています。一方、今年の干支である午(うま)にちなんだ故事「白駒(はっく)の隙(げき)を過(す)ぐるが如(ごと)し」(白い馬が通り過ぎるのを壁の狭いすき間から一瞬見るかのように、月日はあっという間に過ぎさること)とも言います。
 かねてより、私は「海に生きる。山を活かす」を町政に当たる上での基本的な方針と位置付け、歴史、文化、風土が培ってきた資源を最大限に生かして、ふるさと香美町の在るべき姿をあらためて示したいと考えてきました。
 合併から10年が経過し、異なる側面を持つ地域が一つとなるために必要とされる相応の時間は過ぎました。しかし、その間の社会情勢の変化、特に少子高齢化、経済の冷え込みなどにより、このまちから活力が失われたことも、また現実です。それを打破するための施策の展開こそが私の責務だと認識していますが、漫然と行ってはいけません。地域資源を生かし、今ある課題を「発展への可能性」と捉え、何より時間を「貴重な財産」としてスピード感を持って町政に臨む所存です。
 こうした考えを持ちながら、皆様に確かな手ごたえを感じていただけるよう、次のことを今年の重点施策として取り組み、将来への布石を打っていきたいと考えています。

(1) 産業・観光の振興では「但馬・理想の都の祭典」から20年の節目を迎える今年、「夢但馬2014」が行われます。これを契機に但馬地域外からの誘客に力を入れるとともに、神戸市内に計画している情報発信拠点を使った積極的な誘客や特産品のPRなどで「攻めの観光施策」を展開します。
 町内では産業間連携による6次産業化への支援だけでなく、例えば4月に予定されているジオパークフルマラソンといったような町内各種団体や民間企業の自発的な地域活力の創造に対する支援を通して、協働のまちづくりの深化を図ります。

(2) 先ほど申し上げたとおり、まちづくりの基本は皆様の生命・財産を守ること、すなわち安全・安心こそがまちづくりの最重要課題だと考えています。
 「自助」「共助」「公助」意識の啓発・共有、防災・減災に関する情報発信を行いながらも、特に子どもたちの学び舎の耐震補強や老朽施設の改修を進めます。現在整備中の村岡小学校に続き、今年は香住第一中学校、長井小学校、余部小学校でも耐震化を予定しています。
 また、小代区で4月から運用を開始する防災行政無線ですが、村岡区では来年4月の運用開始を目指して整備を進めます。

(3) 町域が広く集落が点在している本町では、交通弱者といわれる高齢者や障害者の移動手段 の確保が喫緊の課題となっています。
 実際に、地域の皆様がどのように考えておられるのかをお聞きしようと、昨年は町内10会場で交通懇話会を開催しました。いただいたご意見の整理、問題点の洗い出しを行い「どうすれば地域に優しい公共交通体系を構築できるのか」という観点から、先進事例の研究などを通して抜本的な見直しにつながるような方針を策定します。

 このほかにも課題は山積みですが、香美町の活力を取り戻すためのこうした諸施策を講じるに当たって、広く皆様のご意見をお伺いしながら、皆様と目線を同じにして、その負託にこたえていく所存です。今後とも町政に対する皆様の温かい叱咤激励、そして絶大なるご支援をお願いいたします。
 結びに、皆様の益々のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げて、年頭のごあいさつといたします。



   平成26年1月


香美町長 浜 上 勇 人

http://www.town.mikata-kami.lg.jp/www/contents/1136438444781/index.html